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【プロジェクト】竹山研究室2017「脱色する空間」  作品
 
01. 「9つのイメージ形態操作による終焉的建築―新しい着色へ―」
学部4回生 三浦 健

 ”機能”と”敷地との関係”の排除

 直観的な形態は、無から生ずべきものだ ”
 “ 構成とは......重さと速度と運動の方向をもとに成り立つ ”
 “ 直観的な感情によって、二つの形態の意想外の対決から力と
 緊張をもった不協和のエネルギーがうまれた ”
 “ 事物は多くの時間的契機を含んでいる ”
これらは『ロシア・アヴァンギャルド芸術』からの引用です。
シュプレマティズムにおける究極の脱色は方向性や配置にたどり着きます。建築における脱色する空間とは、脱色されたものではないのです。徐々に 「脱色」 し新しい概念としての着色をふるまう空間を目指します。機能の残り香と敷地と関係をもった形態が薄れていく先には、描き手としての私の場に対するイメージ形態が浮かびあがります。いわゆる直観を操作したこの形態は建築というよりもモニュメントの要素が強いのですが、人が訪れることで非場所性の空間体験を促します。これはマレーヴィチに代表されるシュプレマティズム絵画が、見るものに自由な解釈を許すことに繋がります。
絶対零度からうまれる空間の魅力は、体験する人それぞれに私の感覚とは違った意味を感じてもらうことではないでしょうか。

 
02. 「Escape of space」
学部4回生 菱田 吾朗

一時の逃避行のように

絵画から主題や事物を切り離し、形態・色彩・構成をそれぞれ分離させたマレーヴィチ。彼は色を現実から切り離し一度脱色することで、現実の色に改めて意味を持たせた。シュプレマティズムの文脈における「脱色する」とは「ある要素を現実の意味から分離し、取り出すことでその要素同士をつないでいた関係性を一旦解き、新たな創造としてつなぎ直すこと」なのではと考えた。
そんな考えのもと、この建築は、現実の世界から切り取られた地面への、夢の中の砂漠への、一時の逃避行である。
常にありふれている空間のスケールを元にしたボリュームを回転させ組み合わせることによって、既定の建築空間の関係性を一旦脱し、新たに作り上げる。地下から湧き上がったボリュームと空から降りてきたヴォイドが地中で出会うそんな連想をさせる8つの空間は新たな脱色の空間となる。そこには人々が寄り添うための水平面だけがささやかに挿入され、脱色へと誘う。
名もない場所で、軽やかに遊び、時には喧嘩をし、空を見上げ、静かに座り込む空間を夢想した。

 
03. 「NOWHERE」
修士1回生 山口 大樹

記憶というイメージ

マレーヴィチは対象を捨て、本質を描こうとしていた。それに倣って空間の本質を考える。


記憶というイメージから空間を生成する。具体的には僕が住んでいた住宅での記憶をもとに行う。それぞれの空間には僕なりの記憶のイメージがある。そこでどんなことをしていたのか、どんな使い方だったのか、どんな感情を覚えたのか。その空間にまつわる様々な事象や情念をもとに空間をつくった。

出来上がった空間には、僕の痕跡が多く残っている。そこで僕がどんなふうに何をして過ごしていたかを感じさせるようなもの。
それらを消す。僕の痕跡が極力見えない空間にした。そうすることで僕が過ごした空間の本質のところ、その空間の本質的なイメージだけが残るのではないか。


コンテクストや歴史背景といった、通常の設計で用いられる条件をすべて排し、自分の記憶という私的なイメージから空間をつくる。

そこには原風景とも呼べるような空間が広がっている。

 
04. 「Harmony」
修士2回生 川本 稜

浮遊する面によって地面や既成概念から脱色する

マレーヴィチは絵画において、無対象を描いた。その結果として絵画に表現されたのは、図形と図形の間の純粋な<調和>のようなものではないだろうか。<調和>を三次元に置き換えて建築へと昇華させることによって、「脱色する空間」を提案することを試みた。ここでは「脱色」を、地面からの離脱、建築の既成概念からの解放と定義できるだろう。
面を浮遊させる手段として、テンセグリティ構造を利用している。構造内で圧縮を担っている棒材を面材に置き換えることで、面の浮遊を可能にし、面同士は螺旋階段で接続させて上下の動線を確保している。プロトタイプとして、6本の圧縮材で構成される簡単なテンセグリティ構造を用いた。今日、テンセグリティ構造は主に空間を覆う手法の一つとして用いられているように見受けられ、新しい空間の可能性を切り開いているとは言えない。この建築はそのような現状に一石を投じるものでありたい。
6つの面のうち3つの面は地面に接しており、人々はそこから空間へと導かれるが、やがて進むにつれて<調和>のみによって空間が構成されていることに気づく。建築の様々な柵(しがらみ)から「脱色する空間」が、マレーヴィチの絵画に入り込んだような感覚をもたらす。

 
05. 「IBITSU」
修士1回生 小林 章太

 

歪んだ空間

空間とは、関係性である。今回はこの関係性を作る壁に注目し、壁を複数重ね、開口に方向をもたせた。


壁に挟まれた空間を歩いていると、いつのまにか自分の斜め後ろに別の空間が現れている。さらに前方にも全然別の空間が見えていて、くぐり抜けるとつながっていたり、逆に微妙に離れていたり。それは、空間が歪んでバラバラになっていくような感覚をもたらすだろう。

06. 「VOID」
修士2回生 ​Jun Qi Wang

 

建築の諸要素をなくした後、残ったものは。

脱色する空間について考えるとき、記憶法である「記憶の宮殿」を思い出した。これは、脳内に見慣れた場所をもとに、空間を定義することによって記憶を保存するという方法である。
現存する建築も、建築の基本要素である壁、柱、床、開口部によって決まった機能を定義されていると考えられる。それらの定義によって、建築の色が決められる。
その逆順として、建築空間の脱色はそれらの要素をなくし、空間を再定義可能なものにすると考えた。

 
07. 「大地からの解放
-Liberation from the earth-」
修士2回生 田中 健一郎

 

関係性の再構築

建築には秩序と方向性がある。
建築における関係性は平面的な秩序によって表現される。ここではそれらを解放し、周辺の秩序から脱却し、方向を失った断片を集積させることで新たな関係を再構築し空間を構成する。

与えられた唯一の関係性 “16 個の敷地 ” を 90 度回転し、集合させることで「空にのみ開いた空間」・「完全に抜けた空間」・「完全に閉じられた空間」・「地面にのみ開いた空間」の4つの新たな空間が出現する。

08. 「Square Field Vanishment」
修士2回生 田原迫 はるか

 

秩序を手放すということ

秩序に従った建築は、心地よく、強く、美しい。建築を設計することは、秩序を生み出すことだとも言えるかもしれない。この課題ではあえてそれを手放すことを「脱色」ととらえ、空間に表した。
ここでは、初めから無秩序な空間を設計するのではなく、2つのベクトルの異なる秩序を重ね合わせた。具体的には、全体から決定される秩序と部分から決定される秩序である。それらが同時に存在することで、互いの秩序は失われる。足を踏み入れれば、日常の所在の感覚から抜け出したような空間が広がるだろう。

『traverse 新建築学研究』は京都大学建築系教室が編集・発行している機関誌です。17年度より紙媒体での出版を止め、web上で記事を発信していく事となりました。
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2018.10 | 112p
19
インタビュー:米沢隆
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essay:
池田剛介, 大庭哲治, 椿昇, 富家大器, 藤井聡,藤本英子
倉方俊輔,高須賀大索,西澤徹夫
竹山研究室「驚きと喜びの場の構想」
平田研究室「建築が顔でみちるとき」
布野修司,竹山聖, 金多隆, 牧紀男, 柳沢究,小見山陽介
18
2017.10 | 112p
インタビュー:五十嵐淳
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三谷純,奥田信雄,魚谷繁礼,
五十嵐淳
竹山研究室「脱色する空間」
竹山聖,​大崎純, 小椋大輔, 布野修司,古阪秀三, 牧紀男, 
Galyna SHEVTSOVA
17
インタビュー:野又穫
2016.10 | 128p
野又穫,松井るみ,石澤宰,柏木由人
​竹山研究室「無何有の郷」
​竹山聖,山岸常人,布野修司,三浦研,牧紀男,古阪秀三,川上聡
interview:
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16
2015.10 | 96p
インタビュー:石山友美
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中野達男,石山友美,TERRAIN architects
竹山研究室「コーラス」
​竹山聖,布野修司,大崎純,古阪秀三,牧紀男
特集:建築を生成するイメージ
2013.10 | 112p
14
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松井冬子,井村優三,豊田郁美,アタカケンタロウ
竹山研究室「個人美術館の構想」
竹山聖,布野修司,小室舞,中井茂樹
特集:建築を生成するイメージ
2014.10 | 112p
15
ホンマタカシ,八島正年+八島夕子,高橋和志,島越けい子
ダイアグラムによる建築の構想
​竹山聖,布野修司,大崎純,
古阪秀三,平野利樹
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