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―和知駅プロジェクト、その後。
博士後期課程3回生 清山陽平

写真1)駅前広場から改修後のJR和知駅舎を眺める

 2017年4月、JR山陰本線和知駅の駅舎改修が完了した。

 これまで本プロジェクトの概要や改修までの過程1)2)、また具体的な改修内容3)4)については紹介してきた。本稿では改修から約2年半が過ぎた和知駅の「その後」を、 月一回ほどの頻度で和知に帰省する筆者の目線から紹介しようと思う。
 駅内喫茶「山ゆり」の営業は続いている。改修では駅前広場や商店街奥の山々を見渡せるカウンターや、ホームと同じレベルで一時間に一本の電車を眺められるソファ席を設けたが、常連客はこうした新しい席をほとんど利用していないようだ。それでも座席数の増加は午前のラッシュ時を中心に役立っているらしい。常連客以外のお客さんには新しい座席を選ぶ人が多く、薄水色に明るくなった喫茶内の雰囲気とともに気に入られているらしい。

 改修以前から「山ゆり」は、高齢者を中心とした数十人の地元常連客による、ほとんど毎日の貴重な溜まり場となっていた。若者など新しいお客さんが入りやすくするのと同時に、現状の環境を大きく変えてしまわないというのが改修の肝であった。常連客のとあるおじいさん(筆者のご近所さん)は、改修直後には雰囲気の変化から足が遠のいたようだったが、最近では以前同様、昼間から赤ら顔でおしゃべりする姿をよく見かける。このおじいさんの他にも、以前からの常連客はほぼ変わらずに「山ゆり」を利用してくれているようで、一安心である。

 喫茶内に新設した棚には住民提供の本や写真、手作りの小物がぎっしりと飾られ、 学生がデザインした喫茶店の新しいメニュー表も使われ続けている。筆者がコーヒーを飲みに行くと、店員さんもお客さんも和やかに、昔のまちの様子を教えてくれたりもする。そのうちに別の常連客が立ち替りで入ってきて、また別の話をして くれて、というようなのが毎度の感じである。

 駅舎前に新設した少し変わった形のウッドデッキは、改修直後から早速住民によるカラオケ大会のステージに、また夏祭りでは多くの人が腰を落ち着ける場所に使われていた。日常的にも電車で帰ってきた高校生が親の迎えを待つ姿が見られる。 駅舎内の小さな待合室でも、改修した腰掛けには直後から手作りの座布団が置かれ、 以前より広々とした室内にはのんびり電車を待つおばあちゃんの姿がある。
 筆者のいた頃は30人であった地元小学校の一学年の児童数は、最近では数名にまで減ったらしい。筆者の同級生でも、地元に残っているのは数名だ。子どもも大人も少なくなる中、住民のささやかな日常が駅前にある大切さを改めて感じる。筆者は幼少期より和知に育ったネイティブだが、一家としては20年ほど前に越してきた余所の人である。そんな立場から疎住の農村地域における唯一中心的な場所を設計することには不安もあったが、最近では子どもの頃から続く、何気なくかけがえのない風景を継げたような気もしている。

写真2)駅内喫茶「山ゆり」のある夕方
 

写真3)多くの人がウッドデッキに腰掛け憩う夏祭りの風景
 

写真4)改修後さっそく座布団が置かれた駅待合室
 

1)清山陽平「和知駅プロジェクト」 traverse17 2016.10

2)清山陽平、神吉紀世子他「駅再生プロジェクト 地方におけるこれからの「駅」の役割」日本建築学会大会デザイン発表梗概集(九州)2016.08

3)吹抜祥平、清山陽平他「小さなまちの拠点 和知駅待合空間改修プロジェクト」日本建築学会大会建築デザイン発表梗概集(中国)2017.08

4)清山陽平、神吉紀世子「小さな駅を中心とした地域持続性への設計―JR山陰本線和知駅における待合空間改修」都市計画、都市計画学会2017.07

『traverse 新建築学研究』は京都大学建築系教室が編集・発行している機関誌です。17年度より紙媒体での出版を止め、web上で記事を発信していく事となりました。
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