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違法開発地における祝祭の場づくり

博士後期課程3回生 清山陽平
 

大岩横長.jpg

写真1)大岩の風景。写っているエリア(風致地区)では以前までの事業所群は撤去され 資材置き場となっている。 写真左奥の約40mにも及ぶ産業廃棄物の山 (通称:『岡田山』)は、地元事業者によって 20年かけて撤去される。

・大岩についての概要

 大岩街道周辺地域(以下、大岩)は京都市伏見区にある「違法開発集積地域」である。 違法開発といっても、違法であることをよく知らぬままに土地を購入し生活する人も多い。また市内の産廃処理を支える静脈産業等の事業者には余所に移ってまで事業を継続することが困難なものも少なくなく、結果的に他での同様の違法開発を招きかねない危惧からも、強制撤去は現実的ではない。公金投入も難しい中、住民や事業者が主体となった環境改善を含めたまちづくりによる是正が進められている。

 神吉研究室ではこれまで、2名の学生が大岩を対象に修士研究に取り組んだ1)2)。 今年度は筆者を含む院生数名が一部エリアにおける整備計画の立案に向けた住民ヒアリングや、試提案の作成を行うことになっている。


・大岩でのここ数年の動き

 大岩には数年前から龍谷大学の学生が入り、コミュニティ活性化に向けた活動を継続的に行っている。最近では国外の大学の訪問やWS開催も多い。また京都市深草支所職員は、鎮守池周辺(市所有地)の整備等を地元事業者の協力を得ながら進め、環境改善を率先している。これらの活動もあり、数年前と比べても市職員や外国人、学生を含む外の人が歩いていても、特段珍しくない雰囲気になってきている。
 

・大岩のこれからに向けて

 2019年11月30日(土)には整備された鎮守池周辺にて深草支所や龍谷大学、住民らの協力による、地元野菜を用いた収穫+食事祭が開催される。昨年までは地元向けの小規模なものであったが、今年は同日に行われる大岩山の一斉清掃の打上げも兼ね、一般参加者も含め百人規模となる見込みである(「大岩がきれいになる日(仮)」)。これに合わせ神吉研究室では、以前和知駅前で行った布屋根による休憩空間3)をより拡張し制作する予定である。参加者の労をねぎらいながら、大岩全体にとっても祝祭性を感じられる場づくりができればと思う。また建築物でも工作物でもない布屋根は、調整区域内でも常設できる可能性がある。夏の酷暑には日陰が恋しくなる大岩における、住民や来街者の合法的な居場所づくりのトライアルともしたい。

 美観とは言い難いかもしれないが、高さ数十mにも及ぶゴミ山や事業所、住宅群、稲荷山裾の地形やきれいな湧水、竹等の植生やこまごまとした畑の中を、大型トラックと自家用車が往来する大岩の風景は独特である。一筋縄ではいかない合法化への道のりを、いろいろな人に今よりもいくらか愛される風景、地域づくりの過程として、それ自体を楽しみながら進んでいければ素晴らしいと思う。「大岩がきれいになる日」は単発的なイベントだが、これから続く大岩のそう悪くない将来を、みん なが薄布に透かし見るような一日としたい。
 

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写真2)トラックの往来で凹んだ路面は雨天時には川のようになってしまう
 

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写真3)畑や事業所群越しにに稲荷山を望む

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写真4)数年前まで竹藪だった鎮守池

    周辺は整備され、広大なオープンスペースに
 

1)中原裕亮「市街化調整区域の違法開発集積地域における土地利用設計に関する研究―京都市「大岩街道周辺地域」を事例としてー」 京都大学修士論文 2016

2)吹抜祥平「違法開発集積地域における改善事業可能性から見た主体設計に関する研究―京都市「大岩街道周辺地域」を事例としてー」京都大学修士論文 2018

3)参考:traverse17

『traverse 新建築学研究』は京都大学建築系教室が編集・発行している機関誌です。17年度より紙媒体での出版を止め、web上で記事を発信していく事となりました。
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