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【ワークショップ】 

    タテカンに見る地域景観

​ Local townscape that appears in "TATEKAN"

アドバイザー:池田 剛介(アーティスト)、

    大庭 哲治(京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻・准教授)、
    椿 昇(京都造形芸術大学教授)、

    富家 大器(四天王寺大学・短期大学部生活ナビゲーション学科ライフデザイン専攻・准教授)
    藤井 聡(京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻・教授)、

    藤本 英子(京都市立芸術大学美術学部美術研究科教授)

参加学生:京都のタテカン文化を守る会、京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻修士1回生、

     traverse19学生編集委員

2018.7.30 京都大学吉田キャンパス デザインファブリケーション拠点にて

 京都大学の立看板(タテカン)は京大の文化ともいわれ、様々なものが大学キャンパス周辺に設置されてきました。しかし今、タテカンは存続の危機に立たされています。学生、大学、地域、行政が対立するのではなく、互いに調和し、タテカンが真の意味で京都大学の「顔」となるために、どんなデザイン、どんな制度を考えることができるでしょうか。

 

グループ1提案 

   ― 「タテカントライアングル」

          

各エリアイメージ画像 プレゼンシートより抜粋

 現在のタテカンが受け入れられない要因はその行き過ぎた無秩序さにあると考えた。タテカン制作や設置・管理が個人や個々の団体でバラバラに行われることに良いイメージを持たれていないうえ、ノウハウ等の蓄積・共有や看板のアーカイブの欠如は、タテカンの「質」の維持を困難にしている。

 そこで、タテカンの良さである手作り感や物質感、ある程度の無秩序さを維持しつつも安全性などの技術面をサポートし、また地域に開かれたものとして受け入れられるために「タテカントライアングル」のシステムを提案する。ここでは、性格の異なる「タテカンスクエア」と「タテカンストリート」という2つのタテカン設置エリアと、「タテカンラボ」というタテカンの制作および情報共有、市民・学生参加の場を設定し、この3つのエリアが相互にバランスをとることでタテカンを維持していく。

3つのエリア分け プレゼンシートより抜粋

 「タテカンスクエア」は百万遍の交差点に設定され、ニューヨークのタイムズスクエアのようにタテカンによる情報発信やブランディングの中心地となる。このエリアでは常設フレームを設け、確実に固定することを条件にタテカンのサイズ規定を緩和する。好き勝手にタテカンを設置することはできず、期間や内容についても管理されるが、交通の要衝であるという性質から観光客や地域住民、学生など多くの人の目に触れることが想定され、京大のタテカンの表の顔となる。

 「タテカンストリート」は東大路通に沿って設定され、タテカンの賑やかでカオスな様子を象徴する場所となる。ここにはタテカン設置のために2本の線材を横向きに用いたフレームを石垣に沿って設置する。このフレームはタテカン設置の自由度を確保しつつ安全性を担保し、バスを待つためのベンチとなるなど地域貢献も果たす。設置費用は京大の卒業生や企業に出資を募り、出資者はフレームに刻印を入れたり、タテカン風の広告を出すことができる。道を歩いていくなかで思いがけないものと出会う面白さを生み出す場となり、SNSなどを用いて気になるタテカンを発信するなど通行人にとっても楽しめる場となることを期待している。

 西部講堂の隣に設置される「タテカンラボ」は、タテカンの制作や設置に関するノウハウの共有を行うための、アトリエやアーカイブの拠点となる。これまではバラバラだったタテカン制作者同士の横のつながりを生み、タテカンに対する学生自治の意識を醸成することを目的とする。また、過去の看板や制作風景のアーカイブを公開し、11月祭などのイベント時にはタテカン制作の参加型イベントを催すなど、タテカンをより開かれたものにする場所となる。タテカンの制作過程をパフォーマンスとして見せるなど、学生たちが様々なことにエネルギーを注ぐ様子を発信することは、自由の学風を標榜する京都大学のブランディングにもつながっていく。

 以上の3つのエリアが相互にはたらき、京大の顔であるタテカンの制作から撤収・アーカイブまでのサイクルが形成される。こうした明確なサイクルは、これまで水面下にあった「タテカン文化」を幅広く共有し、タテカンのさらなる価値を見出し継承していく一助となるだろう。

 

グループ2提案 

   ― 自由の裏方

          

 社会秩序から少し外れた位置にあることがタテカンの良さであり、問題の原因ともなっている。タテカンそのもののデザインや内容を規制することは、その良さを消していしまうものではないだろうか。一方で、周辺地域から受け入れられる努力も必要だ。タテカンそのものに手を加えるよりも、その自由度を担保するシステムを考えた。

 はじめに、百万遍にタテカンを設置するための前提条件を確認した。そのための議論を進めていくと、大きく分けて二つの論点が見つかった。

 一つ目の論点は、百万遍にタテカンが必要なのか、存在が受け入れられているのかについてだ。「なぜ百万遍なのか」への根拠が薄いと市民の賛同は得られない。「昔から京都大学の象徴である」「学外への発信拠点としてうってつけ」という大学内からの視点のほかに、地域と大学の数少ない接点といった都市的な目線で見た百万遍の特徴を捉えていくことが重要であることを再確認した。

 二つ目の論点は、タテカンそのものについてだ。デザインの規制はタテカンの自由度を下げることにつながりかねないが、より鮮明にメッセージを伝えるために見やすいタテカンをつくることは非常に重要だ。フォントやレイアウトのばらつき、統一感のなさなど、紙面としてのデザインができていないことで、タテカンのメッセージが伝わりづらくなっているのかもしれない。

 議論を踏まえ、タテカンの価値を高め、百万遍に設置する土台となるシステムをいくつか提案する。

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百万遍に新たな居場所をつくる

 まず、共通フォーマットとして作品キャプションを掲示する。美術館のように作品のタイトルや意図をタテカンに添えると、吉田キャンパスの擁壁は新たなまちの財産となる屋外ギャラリーに一変する。キャプションというある種の秩序を与えることで、自由度を担保しつつも見た目を整えることができる。

 また、設置場所が京大の敷地内であることを明確にするために、道路と擁壁との間の京都大学の敷地をカラーリングし、場合によっては擁壁を1〜1.5mほどセットバックさせる。これにより、道路占有や歩行者の障害となるといった問題を解決すると同時に安全性や鑑賞スペース確保することができるだろう。

 ほかに、タテカンを安全に固定するために擁壁自体にピンをつけたり足場を組むなどのアイデアが出された。

 タテカン自体にも付加価値を持たせたい。例えば、開くとベンチになるタテカンを設置して百万遍に居場所をつくり出す。バスを待つ少しの間などにも新たな交流が生まれるかもしれない。他にも、伝言板や避難所の仕切りとして機能する仕組みを備えた災害時に役立つタテカンを考えた。このように、タテカン自体が啓発の場以外としての役割を持つことで、まちの人々もその必要性を認めやすくなると考えた。

 学生だけでなく、地域全体がその存在を愛着を持って受け入れ、必要であると感じてもらうことが、百万遍にとって重要なことではないだろうか。タテカンのある風景は、学生だけのものでも、京都市だけのものでもないのである。

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タテカンにキャプションをつける

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災害時に役立つタテカン

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『traverse 新建築学研究』は京都大学建築系教室が編集・発行している機関誌です。17年度より紙媒体での出版を止め、web上で記事を発信していく事となりました。
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