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オブジェ・アイコン・モニュメント

かつてアドルフ・ロースは「真の建築は墓とモニュメントのうちにしかない」と書いた。ネアンデルタール人が死者に花を手向け、現生人類が音の出る楽器を作り、洞窟に絵を描いた時から、人間は空間に目覚め、過去と現在と未来の概念を知り、共同体の結束を意識した。やがて身体を超えるスケールを持つ建築という空間芸術の力を磨き上げるようになった。都市が築かれ、都市の要には常に建築があった。建築という行為の根元には記憶を刻み込むという営為がある。時間と空間を畳み込むという思考がある。建築の有する力を再確認し、その上でこの力を強め、歪め、弱め、消し、きらめかせ、輝かせ…そうした空間加工のイメージをのびのびと広げていきたい。

​                              -竹山 聖

2019 年度竹山スタジオコースでは、「オブジェ・アイコン・モニュメント」という言葉をきっかけとして、世界観に一石を投じるような建築をつくることを目指し、竹山教授、小見山助教授、竹山スタジオに参加する 9 人の学生でディスカッションを重ねた。

 

「オブジェ・モニュメント・アイコン」やそこから派生する概念を分析し解釈することで生まれた、都市や建築に対する各々の問題意識を共有し議論したのち、京都の15 km四方のエリアを9分割し、それぞれ5km四方の区画を無作為に割り当て課題を進めていくこととした。その区画の中から「オブジェ・アイコン・モニュメント」に関わる事象を取り出し、各自の問題意識と照らし合わせる中で、 空間加工における新しいイメージを見つけ出していく。

 もくじ

 ​→ オブジェ・アイコン・モニュメントをめぐる言葉たち

 → 課題設定

 → オブジェ・アイコン・モニュメント分析

 → 作品

オブジェ​・アイコン・モニュメントをめぐる言葉たち
 

「オブジェ・アイコン・モニュメント」およびその派生概念を分析し解釈することでうまれた都市や建築に対する各々の問題意識を学生間のゼミを通して共有し、議論した。以下を読書会で扱った:

 

■『にもかかわらず』(アドルフ・ロース)  

課題文内の「真の建築は墓とモニュメントのうちにしかない」は本著から引用されている。ロースは手段そのものであった装飾が目的化している問題と並行して、 建築家の役割が手段としての図面を引くことから、 美しい図面をみせることに変わることで、 その先がない中身のないものをつくる存在になってしまっていることにロースは危機感を示している。ここで社会背景による合意形成のもとで作られたもの、即ちポリティカルコレクトネスに沿った建築では、プロセスが目的化されてしまっているのではないかという観点が議論によって引き出された。

 

■『S・M・L・XL』(レム・コールハース)  

本著の「ビッグネス」の章でレム・コールハースは、建築のスケールがある閾値をこえた瞬間に獲得するモニュメント性について言及している。また、内部と外部、またその境界について大きな示唆を与えてくれるものであった。 

 

■『もの派』

建築を軸にした議論だけでなく、戦後の芸術運動の「もの派」も注目した。特に李禹煥と菅木志雄を扱った文章を読み、オブジェ同士の関係性と観測者の立ち位置について考えることで、単に輪郭をもつ物体がオブジェ性・アイコン性・モニュメント性を形作っているのではなく、それを捉える観測者の関係性も重要な要素であることを確認した。

 

以上の議論を元に、スタジオのテーマについての思考の枠組みを組み立て、作品に落とし込むことに移って行った。

オブジェ・アイコン・モニュメントをめぐる言葉たち

課題設定
 

 京都の 15 km四方のエリアを 9 分割し、それぞれ 5 km四 方の敷地を無作為に割り当てた。 学生は割り当てられたそれぞれの敷地の中で「オブジェ・アイコン・モニュメント」についての議論から結論づけられた問題意識と照らし合わせ、空間加工における新しいイメージを構想していった。

 京都には、多くのオブジェ・アイコン・モニュメントが点在している。以下は今回のスタジオで扱った敷地とそれぞれのブロックに分布している京都のオブジェ・アイコン・モニュメント性を持つ文化財、伝統建築物、ランドマーク、自然景観をプロッティングしたマップである。

 

 北山杉が大いに存在感を発揮する北西部または比叡山が聳え立つ北東部をはじめとした山々が特徴的なのは北側、かつての御土居があり祇園、平安神宮、京都御所などの観光地に加え京都の伝統的な街並みが並ぶのが中心部である。そして南部には洛西ニュータウン、京都駅および京都タワー、伏見稲荷などがあり、全体を見渡せばそれぞれの区画でオブジェ・アイコン・モニュメントが異なる密度で分布している。

 これらの場所の特異点となるであろうものが果たしてオブジェ、アイコン、モニュメントのどれに該当するのか、またはしないのかについては学生がそれぞれ異なる見解を持ち、作品に色濃く反映されたといえよう。

本スタジオの敷地および各エリアに点在する主要建築物・自然景観等のプロッティング

オブジェ・アイコン・モニュメント分析
 

 竹山教授・小見山助教を交えた研究室ゼミならびに研究室学生有志で開催した読書会でオブジェ・アイコン・モニュメントの定義の仕方、そしていかに空間加工のイメージにつなげるのかなどについて繰り返し議論を行なった。以上の議論を踏まえ、9名の学生はそれぞれオブジェ・アイコン・モニュメントについての見解を深め、この3つの言葉についての仮説的な定義を行なった。

 オブジェ・アイコン・モニュメントについて言葉で記述することに止まらず、学生たちはそれぞれに割り当てられた敷地にて観察した建築物、土木構築物、自然景観などの事象やオブジェ・アイコン・モニュメントの定義および三者から派生する空間加工のイメージをもとにビジュアライゼーションを行い、以下のようなコンセプト・アイコンを制作した。アイコン・マップからもわかるように、各々が持った空間加工のイメージならびに9つの対象敷地のそれぞれは異なる性格を持っている。

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『traverse 新建築学研究』は京都大学建築系教室が編集・発行している機関誌です。17年度より紙媒体での出版を止め、web上で記事を発信していく事となりました。
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2018.10 | 112p
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平田研究室「建築が顔でみちるとき」
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2017.10 | 112p
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2014.10 | 112p
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​竹山聖,布野修司,大崎純,
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