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 特集 建築を生成するイメージ

 

イメージは何が真実であるかを明らかにしないし、ただ一つの意味をもたない。その解釈は人に、場所に、時代に、依拠する。


たとえば建築を記録するもっとも「正確な」方法としての図面。
実体を精緻に写しだす写真、内なる風景を描きだすスケッチ、不可視な関係性を記述するダイアグラ
ム……。
それは、建築を思考し形づくる過程で、また、立ち上がったものを顧みる無限の時間の中で、生成され続けるもうひとつの言語。否応なく私たちは、意味の振れ幅を拡張しながら、イメージとともに思考し、イメージとして記録し、イメージによってまた建築を「生成」するのではないか。


インタビューとプロジェクトを通して、創造の痕跡としてのイメージを考える。

 ニュートラルな写真

 interview : ホンマタカシ

 interview : 八島正年+八島夕子

 団欒を描くように

 project : 竹山研究室

 ダイアグラムによる建築の構想

 essay : 竹山聖

 形を決定する論理

 

 

ダイアグラムによる建築の構想

ダイアグラムによる建築の構想

Architectural Practice with "Diagram"

「イメージ・カタチ・言葉・プログラムを結び、
空間を暗示・示唆するダイアグラムを通し建築を構想する」

ダイアグラムは建築を取りまく社会・制度や土地の環境、機能を成立させるシステムや構造、空間構成にいたるまで、それらを抽象化し、ときに省略し、図式的関係として表現する。建築を成り立たせる構造を明るみにすることによって、建築を雄弁に説明する。
しかし、私たちはこうした単なる図解ではないダイアグラムを探求し始めた。まずピーター・アイゼンマンの『DIAGRAM DIARIES』を手がかりとして、「生成装置」としてのダイアグラムについて議論した。建築の構想において考慮すべき幾多の問題や必然的に存在するコンテクスト、さらには幾何学といった設計の根拠を一度捨て去り、ダイアグラムによって建築を生成する。これが私たちの課題となった。
線で描画される図式に自ずと内包される設計者の恣意的な意図を排除するべく、手で描くことを放棄せねばならないという意識を共有しながら、私たちは試行錯誤を繰り返した。
そうした中で、ある学生が持ち寄った数枚のイメージがスタジオを思わぬ方向へ推し進める。彼は味噌汁でも作るかのように豆腐を刻み、形を崩さぬよう持ち上げると、机に敷いた黒板の上から自由落下させた。当然のように崩れた豆腐を写した写真には、言葉では記述することのできない豆腐の物性が表象していた。
だからといって形態に崩壊の偶然性を取り込もうとするのではなく、あるいは「豆腐が崩れたような形」をそのまま具現化するのでもない。私たちは、イメージに表れたある現象を成立させている内なる構造、あるいはものの原理の中に、まったく新しいダイアグラムの展開を予感していた。
私たちは議論の末、各々の手によってイメージを生成することを試みた。
トマトを切断する、映画のシーンをキャプチャーし重ねあわせる、氷が溶ける様子を観察する…。全員で20 以上の試みがなされ、それらは二次元の画像として持ち寄られた。さらに学生たちは互いのオリジナルなイメージを交換し合った。これもまた、恣意性を取り除くためのプロセスである。
かくして、他者によって生成された一枚のイメージと、同様の手続きによって交換された敷地のみが、自分のプロジェクトの手がかりとして残ったのである。
その後、各々が与えられたイメージを観察し、物質や現象に潜在する構造や原理を独自の手法によって抽出しようと試みる。同時に、二次元の画像が三次元の形へと変換されていく。
一枚のイメージは二人の学生で共有されたため、自ずと互いの手法に差異が生じてくる。しかし、差異を生じたそのプロセス全体が、最後にはダイアグラムとなって表れたのである。「生成装置」としてのダイアグラムを如何にして獲得するか、一つの実験的試みである。( 文・西尾)

o1.

テキストの講読
Peter Eisenman "Diagram Diaries" の
3 篇を和訳・精読する。

02.

イメージの探索・交換

各自が生成したさまざまなイメージを持ち寄り、交換する。

03.

プロセスの構築

イメージが表象する構造・原理から
形を生成するプロセスを構築する。

04.

形態の生成

得られたプロセスをもとに建築形態
を構想。機能は「住宅」とする。

■IMAGING DIAGRAM

私たちが参照したイメージ、「生成」したイメージを辿ってみる。

■WORDING DIAGRAM

私たちが参照したイメージ、「生成」したイメージを辿ってみる。

■WORKS

01. 今村はるか

03. 西川 平祐

05. 長谷川 睦乃

07. 山田 鉄馬

02. 高野香織

04. 鈴木 綾

06. 阿波野 太朗

08. 西尾 圭悟

09. 嶌岡 耕平

『traverse 新建築学研究』は京都大学建築系教室が編集・発行している機関誌です。17年度より紙媒体での出版を止め、web上で記事を発信していく事となりました。
BACK NUMBER
18
2017.10 
インタビュー:五十嵐淳
interview:
project:
essay:
三谷純,奥田信雄,魚谷繁礼,
五十嵐淳
竹山研究室「脱色する空間」
竹山聖,​大崎純, 小椋大輔, 布野修司,古阪秀三, 牧紀男, 
Galyna SHEVTSOVA
17
インタビュー:野又穫
2016.10 
interview:
project:
essay:
野又穫,松井るみ,石澤宰,柏木由人
​竹山研究室「無何有の郷」
​竹山聖,山岸常人,布野修司,三浦研,牧紀男,古阪秀三,川上聡
16
2016.1
interview:
project:
essay:
中野達男,石山友美,TERRAIN architects
竹山研究室「コーラス」
​竹山聖,布野修司,大崎純,古阪秀三,牧紀男
特集:アートと空間
2014.1
14
interview:
project:
essay:
松井冬子,井村優三,豊田郁美,アタカケンタロウ
竹山研究室「個人美術館の構想」
竹山聖,布野修司,小室舞,中井茂樹
特集:建築を生成するイメージ
2015.1
15
ホンマタカシ,八島正年+八島夕子,高橋和志,島越けい子
ダイアグラムによる建築の構想
​竹山聖,布野修司,大崎純,
古阪秀三,平野利樹
interview:
project:
essay:
20
2020.01 
takeyamalab.jpg
Traverse.jpg
​満田衛資, 蔭山陽太, 鈴木まもる×大崎純
学生座談会
小椋・伊庭研究室
小林・落合研究室
平田研究室
三浦研究室
​井関武彦, 布野修司, 竹山聖, 古阪秀三, 牧紀男, 柳沢究,  小見山陽介, 石井一貴, 菱田吾朗, 岩見歩昂, 北垣直輝
interview:
 
project:
 
 


 essay:
インタビュー:満田衛資
2020.11 | 
21
ABOUT
インタビュー:
   木村吉成&松本尚子
discussion:
 
project:
 
 
 
essay:
​木村吉成&松本尚子, 宮本佳明,伊藤東凌,井上章一
竹山研究室「オブジェ・アイコン・モニュメント」
神吉研究室「Projects of Kanki lab.」
​金多研究室「自分の仕事を好きにならな」
布野修司,竹山聖, 大崎純, 牧紀男, 柳沢究,清山陽平,成原隆訓,石井貴一
2018.10 
19
インタビュー:米沢隆
workshop:
discussion:
project:
 
 
 
essay:
池田剛介, 大庭哲治, 椿昇, 富家大器, 藤井聡,藤本英子
倉方俊輔,高須賀大索,西澤徹夫
竹山研究室「驚きと喜びの場の構想」
平田研究室「建築が顔でみちるとき」
布野修司,竹山聖, 金多隆, 牧紀男, 柳沢究,小見山陽介
22
2021.11 | 
インタビュー:藤江和子
interview:
 

project:
 
 

 essay:
山岸剛,後藤連平,
岸和郎×平田晃久,
竹山聖×小見山陽介
​平田研究室
ダニエル研究室
高野・大谷研究室
西山・谷研究室
布野修司, 古阪秀三, 竹山聖, 大崎純, 牧紀男, 柳沢究, 小見山陽介,大橋和貴, 大山亮, 山井駿, 林浩平
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