【プロジェクト】 学生座談会

​ 京都に巣づく ―「そこに住まうこと」を考える―

長澤寛 中村友彦 奥村拓哉 齊藤風結 尾崎聡一郎 尾上潤 三宅真由佳 

京都大学には全国あるいは世界各地から学生が集まっています。そのため学生たちが京都に巣づいていく過程は一様ではなく、それぞれが京都という街への思いを抱いているでしょう。

​京都において観光客でもなく完全な住人でもない、学生という立場で、「そこに住まうこと」を考えていきます。

聞き手=雨宮美夏、高山夏奈、竹岡里玲英、久永和咲
2020.8.2 ZOOMにて 

​黄昏時の鴨川デルタ(提供:新靖雄)

学生座談会参加者の居住遍歴

奥村――修士一年の奥村です。出身は札幌市で、生まれてすぐ東京に引っ越して2年過ごした後、親の仕事の関係で、アメリカのヒューストンに。3、4年ほど過ごしてから札幌に戻ってきて大学から京都で一人暮らしを始めました。

 

三宅――四回生の三宅真由佳です。生まれは神奈川県で、幼少期は神戸市と横浜市で過ごしました。その後、引っ越して東京都渋谷区に10年、練馬区に3年いました。今、実家は世田谷区にあります。

 

齊藤――修士一年の齊藤です。生まれは大阪なんですが、幼稚園の時は兵庫県三田市、小中高の時は大阪の堺市に住んでいました。大学に入ってからは京都で一人暮らしをしています。

 

中村――修士二年の中村友彦です。生まれは大阪の枚方市で、富山市、東京都文京区、岡山市を経て、大学生から京都で一人暮らしを始めました。修士一年のときにスイスで1年留学した後、現在また大阪の実家で暮らしています。

 

尾崎――東京大学修士一年の尾崎聡一郎です。生まれは京都で、父の実家がある鳥取県に小3から移って、大学でまた京都に戻り、大学院から東京に来ました。

 

尾上――四回生の尾上です。僕の出身は岡山県で、高校卒業まで過ごしたあと、大阪で1年浪人生活をして、広島大学に入学して、東広島市で1年過ごしたあと京大に入り、今は下宿しています。

 

長澤――修士二年の長澤です。僕は生まれは福岡県の筑紫野市というところで、実家がある福岡県糟屋郡須恵町というところで高校卒業まで過ごしたのち、京都で6年を過ごしています。

京都という街について

——京都に来て衝撃を受けたことや初めて気づいた地元の特徴はありましたか。

 

三宅――東京って交通網は電車や地下鉄がメインで、私の高校には「自転車に乗ったことがない」「乗れない」なんて子が結構いたんです。でも京都だと大学にも自転車通学。むしろ自転車大国みたいな感じで、衝撃を受けました。

 

奥村――たしかに交通網には違いがありますね。札幌は地下鉄がメインなので。京都に来る前は札幌は田舎だと思っていたので、田舎の札幌に地下鉄があるならどこにでも地下鉄があるだろうと思っていました。

 

中村――岡山と京都は自転車でどこでも行けるという点ではちょっと似ている気がしました。市街地はすごくフラットなので。だから、自転車文化にはすぐ馴染めました。


尾崎――鳥取は商店街や郊外のほうが栄えているので、皆自転車ではなく車で移動しています。電車も1時間に1本とかが普通でほぼ使い物にならなくて。ちなみに鳥取では未だに「汽車」っていうんです。電車通学・電車通勤のことを「汽車通」っていう。

齊藤――京都では路駐がとても多くて、追い越し車線がメインになっているから車は使いづらい印象があります。やっぱり道路自体が狭いからですかね。

 

中村――京都は自動車が発達する以前の街のつくりが強すぎて、それが残っている。普通の地方都市は新しく車のために開発しているよね。

京都の道は全部直交で、どう進んでも辿り着くから歩くたびに発見があるのが魅力だと思います。

 

尾上――碁盤の目だから京都は地図がなくても歩けますね。

 

尾崎――東京の人は東京の地図って頭に入っているんですかね。電車の路線は分かるけど、京都みたいに頭に地図が入っていないんです。

 

三宅――たしかに京都ほど東西南北の感覚がないですね。私も線路としては大体の位置は覚えているんですけど、それがどの方角に向かっているかとなると疎いです。

 

齊藤――東京は駅ごとのまちの特徴が多様な印象があります。

 

三宅――東京は繁華街ごとに服装すら全然違うんです。私も、友達と自由が丘や代官山のお洒落スポットに行くときは「大人っぽい人が多いから背伸びした格好でいこう」とか。それに対して京都はまち全体が似たような、ちょっと平坦な感じはすると感じています。

 

齊藤――京都の街並みはすごく水平に広がっていますよね。例えば大阪の梅田は高層ビルとショッピングのビルが垂直方向に並んでいて、その中で上方向や下方向に行きますが、京都は水平方向に商店街が広がっていくので、最初に行った時はびっくりしましたね。

 

奥村――札幌は全部地下で完結できてしまうから移動も全部地下です。地下街に店も入っているのでほとんど外に出ない。その分、方角も意識することがないのかなと思います。

JR因美線を走るディーゼル列車(提供:尾崎聡一郎)

​進学にあたって京都を選んだ理由

——皆さんが大学を選ぶにあたり京都であることを意識しましたか。

 

齊藤――京都大学に行きたかったのは大きかったですけど、単純に京都に住みたかったのはあります。家族が来ることを考えたときも、自分が京都のサテライト拠点になったら旅行のときに便利だなとは考えていました。実際、家族はコンスタントに来ています。

 

奥村――僕はそもそも大学を東大と京大で迷っていて、将来的には東京に住みたいから大学生活は一旦京都に住もうかなという考えが決め手の一つでした。

 

長澤――北海道という1個完結してる島の生活圏の中から出たいというモチベーションってなかったですか?

 

奥村――僕は、一人暮らしがしたかったので出たいなと思っていました。けど、外に出てみて初めて地元の大きさや魅力の多さに気付きました。

 

 

 

——実際に学生になって、京都に住んでいることを実感した瞬間は何かありますか。

 

三宅――河原などの屋外で飲んだり、花火したりするときです。私が高校生のときに京大に入った兄から、友達と鴨川の河原で花火した話を聞いて、京大に入ったらそういう遊びができるのかと魅力に感じていました。東京にはそうした自然がないので、それが京大を選んだ決め手になりました。

齊藤――喫茶店で観光客らしき人が入ってきて、「〇〇寺きれいだったね」みたいな話をしてるのを見て、「ふふ、楽しそうだね」って、京都側の人間かのようなコメントが浮かんでしまったときに、ちょっと馴染んだのかなっていう実感はあったかもしれないですね。

 

尾上――僕は、部活で下京や西京極に自転車で行くんですけど、その帰りに「あれ、これコナン君の映画で見たぞ」と気付いたことがあって、スクリーンであった京都が今目の前にあるんだと思いました(笑)。あとは単純に関西弁を聞いたときにも、京都を感じました。

鴨川で花火をする大学生(提供:三宅真由佳)
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『traverse 新建築学研究』は京都大学建築系教室が編集・発行している機関誌です。17年度より紙媒体での出版を止め、web上で記事を発信していく事となりました。
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2018.10 | 112p
19
インタビュー:米沢隆
workshop:
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essay:
池田剛介, 大庭哲治, 椿昇, 富家大器, 藤井聡,藤本英子
倉方俊輔,高須賀大索,西澤徹夫
竹山研究室「驚きと喜びの場の構想」
平田研究室「建築が顔でみちるとき」
布野修司,竹山聖, 金多隆, 牧紀男, 柳沢究,小見山陽介
18
2017.10 | 112p
インタビュー:五十嵐淳
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三谷純,奥田信雄,魚谷繁礼,
五十嵐淳
竹山研究室「脱色する空間」
竹山聖,​大崎純, 小椋大輔, 布野修司,古阪秀三, 牧紀男, 
Galyna SHEVTSOVA
17
インタビュー:野又穫
2016.10 | 128p
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野又穫,松井るみ,石澤宰,柏木由人
​竹山研究室「無何有の郷」
​竹山聖,山岸常人,布野修司,三浦研,牧紀男,古阪秀三,川上聡
16
2015.10 | 96p
インタビュー:石山友美
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竹山研究室「コーラス」
​竹山聖,布野修司,大崎純,古阪秀三,牧紀男
特集:アートと空間
2013.10 | 112p
14
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松井冬子,井村優三,豊田郁美,アタカケンタロウ
竹山研究室「個人美術館の構想」
竹山聖,布野修司,小室舞,中井茂樹
特集:建築を生成するイメージ
2014.10 | 112p
15
ホンマタカシ,八島正年+八島夕子,高橋和志,島越けい子
ダイアグラムによる建築の構想
​竹山聖,布野修司,大崎純,
古阪秀三,平野利樹
interview:
project:
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20
2020.01 | 112p
インタビュー:
   木村吉成&松本尚子
discussion:
 
project:
 
 
 
essay:
​木村吉成&松本尚子, 宮本佳明,伊藤東凌,井上章一
竹山研究室「オブジェ・アイコン・モニュメント」
神吉研究室「Projects of Kanki lab.」
​金多研究室「自分の仕事を好きにならな」
布野修司,竹山聖, 大崎純, 牧紀男, 柳沢究,清山陽平,成原隆訓,石井貴一

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ISSN 2435-6891
kyoto university architectural journal