【リレーインタビュー】 構造家・満田衛資
住宅という巣
―空気がつながる家

1階のホール
ーー1階のホールはどのように使われていますか。
妻とも共有していた話として、子どもたちにあまり自室に籠って欲しくないという考えがありました。そこで個室を狭くつくる代わりに、図書館の閲覧室やカフェのようなスペースとして自由に使ってくれればいいかなと。自分の勉強机で勉強していても飽きる時がありますよね、そんな時の居場所になればいいなと思っています。あとはプロジェクターでテレビ番組や映画を観たり、娘がピアノの練習をしたり。本当に多様ですよ。京都の家には玄関間と呼ばれるスペースがあって、中までは上がってもらわずにそこで対応しておしまいということもあるわけですよね。そういった玄関間の使われ方も、「ホール」を取り入れるに至った発想の一つです。やむを得ず玄関が狭くなっていますが、玄関間をちゃんと用意しているので、玄関は単なる靴脱ぎ場だと考えられます。実際に妻がPTAの集まりでホールに机を出して会議をしていたこともあります。受験勉強の時は、子どもが友達を連れてきて勉強会をしていたこともありましたね。それともう一つ、ホールを設けることで廊下がいらなくなります。廊下は壁を建ててつくるものなので、明るい家をつくるということに反するんですよね。だから水回りも閉じずに、ガラスで囲っています。普通お風呂場などは隠すものだからどうしても狭くなるし、かつ他の部屋まで暗くしてしまいます。夜にしか使わないのが基本なので、昼間はちゃんと光と風を通せた方がいいと考えました。ガラス張りにすると言うともちろん家族は驚いていましたが、視線は内側からカーテンでコントロールすればいいと伝えるとすぐに納得してくれました。トイレはさすがに壁で塞いでいますけどね(笑)。
ーー実際に住み始めてみて、家族の方が想定外の使い方をされていたようなところもありますか。
ホールを図書館的にも使える場所にもしようというのは考えていたんです。だから子ども部屋は机しか置けないくらいのサイズにして、ロフトで寝てくださいという風にしました。すると最近、子ども同士で交渉して、ロフトの下だけを使う人と上だけを使う人で分けたいから間仕切りの壁をぶち抜いてくれと言われました。子どもが自分たちの成長に合わせてカスタマイズし始めているんです。カスタマイズできる限界がすぐに来るのでこれ以上はないと思いますけど(笑)。
ーーお風呂の上は茶室になっていますね。どのような使い方をされていますか。
皆さんと同じ大学院生の頃にお茶を習い始めて今も通っていて、その練習のための場所なのですが、「茶室」と言うと他のことができなくなるので「お茶の練習スペース」と言うようにしています。要するにロフトですよね。高さは1.4mもありません。僕としては畳の置けるスペースが欲しくて、キッチンの上部などの余ったスペースに設計しようと考えていました。検討を進めるうちにお風呂の上が一番良いということになったのですが、風通しがすごくいい場所で、寝転がったら気持ちいいんですよ。

お茶の練習スペース
ーーご自邸を建てられてから、ご自身、ご家族、地域も含めて何か変化や意見はありましたか。
子どもがよく友達を連れてくるようになりましたね。この近所だともっと大きい家はたくさんあるのですが、妻も子どもの友達が来ることに対して抵抗感をもっていないので、人はよく集まっています。前の家のままだったらどうかというのはもはや比較対象がないのでわかりませんが、人が集まりやすい空間になっているとは思います。
ーー個室でもリビングでもない、ホールという共空間がある影響は大きそうですね。
2階のリビングで騒いでいる時もありますが、2階が使えない日は1階のホールで、というのはうまいこと理解して使っていますね。